東京高等裁判所 昭和26年(う)3656号 判決
被告人 河野亘
〔抄 録〕
第一点について。
原判決が原判示倉橋利雄の権利に属しているものと認めた、ライター及びその類似品に対して、登録番号第六四三二号の二をもつて登録された、王冠の図形の商標についての商標権が岩田兄弟商会の権利に属していた、商標法第五条の規定に基いて指定せられた第十七類の商品のうち、消火器、複写機、裁縫機、調帯及びその各部を除いた以外の同類に属する機械器具及びその各部一切に対して、登録番号第六四三六二号の一をもつて登録せられた、王冠の図形の商標についての商標権の指定商品のうちから、ライター及びその類似品のみに対する商標権を分割して移転せられたものであることは論旨の指摘するとおりである。ところで岩田兄弟商会の権利に属していた本件の王冠図形の商標についての商標権は、後に控訴趣意第二点について説明するように、明治四十二年十月二十六日、農商務省令第四十四号商標法施行細則第二十条が指定した類別に従つて指定せられた商名及びその類似品について、右商標を専用する権利を指しているものと解すべきであるが、同条が第七類として、「他類ニ属セザル金属製品」と指定し、その細目については、「鋳物、打物、彫鏤品、編物等」と例示しているのに対し、第十七類としては、「他類ニ属セサル機械、器具及其ノ各部」と指定し、その細目について、「汽罐、汽機、発電機、電動機、変圧器、織機、紡績機、裁縫機、印刷機、揚水機、消火器、潜水器、調帯等」と例示しているのを対照し、なお同条が指定した他類の商名と比較考量すれば、機械器具は、それが第七類以外の他類、例えば、第十八類の「理化学、医術、測定、写真、教育用ノ器械器具、蓄音器、眼鏡、算数器類及其ノ各部」、第十九類の「農工器具」、第二十類の「運搬用機械、器具其ノ各部」、第二十一類の「時計、其ノ附属品及其ノ各部」、第二十二類の「楽器」等の類別に属するものと認められる場合は格別であるが、そうでない限り、たとえそれが金属製品であるとしても、直ちにこれを第七類に含ましめる趣旨ではなく、いやしくもそれが機械器具に当るものと認められる以上は、その大小、用途等の如何にかかわらず、すべてこれを第十七類に所属させているものと解するのを相当とするところ、ライターは発火器具の一種に属するものと認められ、従つて機械器具の一種に当るものと解せられるが、他にこれを含ましめていると認めるべき類別は見当らないから、ライターは第十七類に属する商品と認めるのが相当であり、結局これと同様の見解に立つた原判決は相当である。そして論旨が指摘する特許局発行の昭和七年三月調「類似商品例集」に徴すれば、第十七類の番号八四には「金属製機械マッチ」と明記してあり、又特許庁発行の昭和二十八年四月改訂「類似商品例集(改訂版)」にも、第十七類の番号十五の「金属製機械マッチ、戸の開閉を静かにする器具、洗濯機、洗滌機、掃除機、冷蔵凾冷蔵庫」の項に「金属製機械マッチ」と明記してあるが、ライターは右にいうところの「金属製機械マッチ」に当ることが明らかであるから、ライターが第十七類に含まれるとする叙上の解釈は、特許局又は特許庁の実際の取扱とも符合する相当の解釈というべきである。もつとも原裁判所が証拠として取り調べた登録番号第二三〇六三一号、同第二三四四二一号、同第二三六〇四九号、同第二八〇六六三号、同第二八九〇五六号及び同第三〇三五八五号の各商標原簿の認証謄本の記載によれば、ライターがいずれも第七類に属する商品として登録せられていることは論旨の指摘するとおりであるが、ライターが第十七類に属していることは前段において説明したとおりであり、且つ前記「類似商品例集」は第七類について、鍋釜類として鍋、釜、鉄瓶、銅壺、風呂釜、竈炉類として竈、焜炉、厨炉、暖炉、火鉢、薬、行厨凾類として、薬、水差、金盥、含嗽鉢、行厨凾、匙、湯タンポ行火類とし湯タンポ、金属製行火、寝炉、懐炉、火熨斗類として火熨斗、アイロン、裁縫用焼鏝、火箸十能類として、火箸、灰掻、鉄灸、火把、五徳、十能、台十能、鍋敷、釜敷を挙げたほか、容器類、バケツ類、壜蓋、建築金具、錠前、蝶番、発条、調帯、靴金具、傘杖金具、袋物類金具、馬具、札、管、燃物及船具、鐘、金庫、活字類、鈴及笛、綱類、箔類及び琺瑯鉄器に属する各種の金属製品を挙げているだけで、ライターについては全然触れるところがなく、又前記「類似商品例集(改訂版)」も、第七類についてこれと全く同一の商品を掲げているだけで、ライターについては全然触れていないのであるから、ライターを第七類に属する商品として、これに対する商標を登録すべき理由はなく、従つて、前記各商標原簿の記載によつて右解釈を左右すべきいわれはなく、且つこれによつて、ライターに対する本件王冠の図形の商標が前記倉橋利雄のために第十七類に属する商品に関するものとして登録されたことを非難することは当らない。結局論旨は、ライターは第七類に属するものであつて、第十七類に属するものではないとする誤まつた前提に立つものであつて、理由がない。
註 本件は量刑不当で破棄。